ネットで短歌 ~結果発表~
「さくら」または自由
短歌応募総数/117首
1首 図書カード 5000円分+記念品
えんどうけいこさん(42歳)埼玉県
病室に閉じ込められた君のため画像フォルダを桜で満たす
【選評】
近年はタブレット端末などを持参すれば鮮明な画像を病室に届けることもできるし、メールで送ることもできますね。満開の桜をその目でみることの叶わない君のために、たくさんの桜の画像を集める。そっけないような詠みぶりの分、フォルダに満ちているのが桜だけではなく、大切な人への作者の気持ちだということが伝わってくる作品です。
5首 図書カード 3000円分+記念品
田中亜紀子さん(44歳)三重県
遠くより眺め近づくことなかれ深山桜も恋しき人も
※深山桜=みやまざくら
【選評】
山深い場所にひっそりと咲く桜にも、恋しい人にも、近づいてはいけない。命令形はそれを守り切れそうにない自分への言い聞かせかもしれません。美しいものへのあこがれも、人を愛することも、理性や命令ではどうすることもできないということを知っている人の歌。
北山蕙宣さん(80歳)大阪府
学帽のさくらの紋章なつかしく 亡母の行李の中に匂えり
※亡母=はは ※行李=こうり
【選評】
学生帽は作者の持ち物でしょうか。亡くなられたお母さまが大切にしていた行李(衣装箱)には、たくさんの匂いと共に思い出が詰まっていたことでしょう。その行李を作者もまた大切にしてきたのですね。時間を超えた静かな情愛の歌です。
吉田麻人さん(9歳)兵庫県
百年間立ち続けてる桜の木つかれてるのか分からない
【選評】
百年間春夏秋冬立ち続けてきた桜も、花を咲かせた時間はほんのわずかです。春の数日間を除けば、顧みられることもあまりありません。9歳の作者の素直な気持ちに、百歳の桜も思わず「自分でも疲れているのかわからない時があるんだよ」と本音が出て、気持ちが楽になるかもしれませんね。
宇野なずきさん(26歳)大阪府
最初から綺麗に咲くと決まってるソメイヨシノの深いため息
【選評】
ソメイヨシノは本当に最初から綺麗に咲くと決まっているのでしょうか。咲きはじめに雨に降られて傷ついたり、寒の戻りにつぼみのまま落ちてしまうかもしれません。ソメイヨシノに仮託した深いため息が、本当はどこから聞こえてきたのか。美や運命についてまで考えさせられる歌。
堺 紀彦さん(45歳)滋賀県
数えきれないほどの過ちを犯し泣いてるオレの肩にも桜
【選評】
思わず与謝野鉄幹に意見を聞いてみたくなった歌です。もちろん晶子にも。「数えきれないほどの過ち」とは穏やかではありませんが、作者はまた数えきれないくらいの涙を流してきたのでしょう。実はやさしい作者の肩に、そっと舞い散る花びらが見えるようです。上句の破調ですが、「数えきれない/ほどの過ちを/犯し」と句またがりに一気に読むとドラマチックなリズムが出てきます。
坂口桂香さん(80歳)大阪府
一堤に 華やぐ桜 人を寄せ 三春ゆかりの 花と知らずや
中本速さん(34歳)千葉県
蜜蜂の群れのさなかにあるごとく桜吹雪に顔を覆へり
潮田さなえさん(50歳)大阪府
春の日に連なる桜せり出して花筏白く湖面にゆれる
石川直樹さん(52歳)鹿児島県
散り急ぐさくらの後を追いかけて旅してみたい北の果てまで
宮崎大輝さん(6歳)東京都
はるよべば はなはこたえる あたたかな かぜにはっぱを ゆらゆらさせて
菊池優花さん(18歳)千葉県
ねえ上を見てごらんよと言うように花びらたちが視界でおどる
たくさんのご応募ありがとうございました!
協力・選評 与謝野晶子倶楽部 運営委員 勺 禰子