ネットで短歌 ~結果発表~
2016 夏 実施分
「あさがお」または自由
1首 図書カード 5000円分
小俣卓紀さん(13歳)東京都
みだれ髪説くには早い?十三歳胸の木琴連打して詠む
【選評】
「胸の木琴連打して」がとてもとてもいいですね。『みだれ髪』は説明するまでもなく、与謝野晶子の第一歌集。「説く」は「やは肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君」を思い起こさせますね。13歳のときにしか表現できない木琴のような軽やかで美しい音(ことば)があると思います。その音色を大切に、あらゆることを詠んでください。楽しみにしています。
5首 図書カード 3000円分
小池永遠さん(17歳)神奈川県
気がつくと天に響くは蝉時雨 梅雨過ぎ行くも止まぬ雨かな
【選評】
梅雨がいつ始まっていつ終わったか、年々わかりにくくなってきました。梅雨明け宣言にはピンとこなくても、蝉しぐれが始まることによって、改めて梅雨が過ぎ去ったことを実感する…。時間の流れや自然・気象のうごき、無くなってから気づく様々なことを感じさせてくれるスケールの大きい歌です。
田中亜紀子さん(44歳)三重県
陣取りをするように蔓伸ばし行く朝顔 工事現場の柵に
【選評】
ぐんぐん伸びてゆく朝顔の蔓を、陣取りに見立てた作者。そうですね、どこに蔓を伸ばすかは、まさに生存競争の陣取りそのもの。その場所がいずれ撤去されるだろう工事現場の柵であることも「陣取り」のむなしさのようなものとマッチしています。下句の句跨(またが)りと一字あけも効果的です。
櫻淵陽子さん(45歳)大阪府
儚げに几帳面に咲く朝顔が何か言いたげゆつくり聞こう
【選評】
朝顔を形容する言葉として「儚(はかな)げ」「几帳面」を併記したことが、この歌の手柄です。儚げなだけでも、几帳面なだけでも、朝顔の「性格」まで見え隠れしてきません。ゆっくりと話を聞いてあげようと思えるのは、実は聞き手側の実力なんですね。
一條智美さん(40歳)大阪府
自分でもおもいがけない展開に予定がひとつ変わっただけで
【選評】
「おもいがけない展開」になれば、普通は予定ががらりと変わってしまうところを、「ひとつ変わっただけ」だという不思議な歌。でも、思いがけないと言いながらも予感していることって、案外多いもの。些細な心の動きを見つめることは、歌を詠むときの大切な姿勢です。
増田優香さん(49歳)兵庫県
ただひとつ利休の残ししあさがほは百の花より美しかりけむ
【選評】
千利休の美学をあらわす有名な逸話ですね。庭一面に咲き誇る朝顔を楽しみに訪れた秀吉に、その花をすべて刈り取って、茶室に一輪の朝顔を用意した利休。多くの美を捨て一つの美を際立たせた利休について、文語ではなく口語に近い形で気持ちを詠んでみてもいいかもしれません。
ご応募、誠にありがとうございました。
協力・選評 与謝野晶子倶楽部 運営委員 勺 禰子